源氏山は源氏物語を主題として全体が構成されている。主役は林孫之進作のからくりによる紫式部である。舞台は石山寺。回り舞台の形式を用い、物語の構想が現れては消える、紫式部の思考を具体的に見せるため、平安風の子人形たちを使って表現している。
また大津で行われる祭事にちなみ「近江八景」という題材とを融合するため、紫式部のからくりを囲むように
近江八景の欄間が彫刻されている。しかしこの欄間に「石山の秋月」は刻印されていない。「七景」しかないのである。からくりに戻って考えると「源氏物語 須磨の巻」を構想している紫式部at石山寺 そのものが「石山の秋月」となっていることに気がつく。大津祭りは秋に行われる。これでやっと「八景」になる。よくできたコンセプトワークであるがこれを理解しているのは、この源氏山を作った人々のみであることを忘れてはならない。欄間の彫り物に「石山の秋月」が欠けているどころか、近江八景があることすら外からではわからない。何のためにそこまで凝るのか。
このからくりと欄間を長谷川玉峰の天井画
「四季草花図」と胴幕の
「草花図」でさらに引き立てている。
また源氏にちなんで、
源氏香図をも採用している。これら「源氏」と「近江」をミックスし当時のテクノロジーを駆使したからくり人形をもってして、「源氏山」の完成となるのである。